低侵襲婦人科手術センターホーム 当院での腹腔鏡下手術の現状

婦人科低侵襲手術について

当院での腹腔鏡下手術の現状

当院は、地域の産科診療・婦人科診療を補完することもひとつの目的として設立されています。そのような診療環境のなかで、婦人科手術部門では、より低侵襲の治療が提供できるように考えてきました。外科的治療の環境は、術者の技術のみならず、麻酔科診療、手術部の機器整備、手術室の人材など多くの要因によって左右されます。当院は、設立から救急病院としての役割を果たせるように設計し、体制を整備し、救急疾患も含めて内視鏡手術での対応を出来る限り行うことができるように設計しています。



腹腔鏡下手術は子宮筋腫核出術、子宮全摘術、卵巣腫瘍の手術などの他、子宮体がん、子宮頸がんに対しても腹腔鏡下手術による治療を行っています。


良性疾患への腹腔鏡下手術

子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮内膜症などの疾患を中心に、良性疾患には広く腹腔鏡・子宮鏡などの内視鏡下手術で対応できる施設となっています。良性疾患の場合、症状がつらい方、今後の妊娠を希望している方など、ひとりひとりの患者さんによって、機能温存の程度を考慮しながら行うことが必要となってきています。ここでは、手術が適応となる症状のなかで、比較的頻度の高い症状への治療への対応をお示しします。


月経困難症の患者さんへの治療

月経時の痛みは評価はとてもむずかしいですが、子宮筋腫や子宮内膜症が原因となっている場合も多くあります。その中でも子宮内膜症への治療は、薬物と腹腔鏡下手術がおおきな柱となっています。痛みをともなっている子宮内膜症の患者さんの中で、排便時や性交時に強い痛みを感じるなどの方は腹腔鏡による内膜症病巣切除が有効なことが多くあります。婦人科領域の腹腔鏡のなかでも、このような深部内膜症と呼ばれる領域の手術は比較的難易度が高いですが、当院では、開院以前から内膜症の手術を多数経験してきた術者が複数いますので、対応が可能です。患者さんの症状や妊娠への希望、ご年齢などを考慮しながら手術のやり方を調整し、薬物療法も選択しています。


子宮内膜症の患者さんへの治療(膀胱内膜症、直腸内膜症)

子宮内膜症の治療は、月経困難症の治療を伴う場合が多くあります。そのなかでも、外科治療が有効なのは、膀胱内膜症、尿管内膜症、および直腸内膜症といった、骨盤内の臓器に内膜症が進展した場合です。患者さんの症状、年齢、挙児希望の有無などを考慮しながら治療を進めて行きます。当院では、外科、泌尿器科と連携して、尿路系の内膜症(膀胱内膜症、尿管内膜症)および消化管系の内膜症(小腸、結腸、直腸など)も腹腔鏡あるいは腹腔鏡補助下の手術で対応しています。


卵巣腫瘍の患者さんへの治療

当院はリプロダクションセンターを産婦人科部門で併設していることも特徴です。従来は、体外受精の施設は症例数が多い施設でないと良好な臨床成績(受精率、妊娠率など)が得られないとされてきましたが、当院では設計段階から、いままでの他院での経験から得られた方法を取り入れて、機器の選択、培養室の設計を行ってきたため、体外受精の開始初期から良好な臨床成績を得ることができています。
腹腔鏡下手術を多数手がけている施設ですので、不妊症の患者への治療方針として、外科的治療と不妊治療が同時に計画できるため、同じ施設で治療が可能ということのみでなく、機能温存を重視した治療も可能になるというメリットがあります。また、手術療法と体外受精が同時に計画できるため、迅速な対応も可能にしています。手術手技も、機能温存を優先するのか、ご病気の治療を優先するのか、ご本人と相談した上で、治療方法を調整することができます。


婦人科悪性腫瘍手術への取り組み

国内での婦人科悪性腫瘍への腹腔鏡下手術導入は遅れをとってきましたが、視野の良さ、出血の少なさ、術後腸閉塞の発症頻度の低下などが報告されていましたので、保険診療としての認可前から、自費診療での診療を行ってきました。2013年には先進医療による腹腔鏡下子宮体がん根治術の施行資格を得るとともに、2014年4月からは、腹腔鏡下子宮体がん手術を保険診療として行える施設として認定されるに至っています。子宮頸がんの腹腔鏡下治療も、2018年4月から保険診療の適用となりました。子宮頸がんの機能温存手術には広汎子宮頸部切除術がありますが、当院では腹腔鏡下広汎頸部切除術の施行が可能となっています。