低侵襲婦人科手術センターホーム 腹腔鏡下手術とは?

婦人科低侵襲手術について

腹腔鏡下手術とは?

腹腔鏡下手術の進歩

腹腔鏡下手術の分野では、最近15年ほどで急速に診療機器の性能と精度が高くなりました。腹腔内を観察するカメラの解像度は驚くべき進歩で、テレビのハイビジョン化とともに高画質が当たり前になっています。これにともない、腹腔鏡によって治療を行う疾患の適応範囲も広がってきました。はじめは卵巣腫瘍や子宮筋腫などの良性疾患が腹腔鏡下手術の治療対象でしたが、1990年代より悪性腫瘍にも腹腔鏡が使用され始め、現在では子宮体がんや子宮頸がんの腹腔鏡による治療も一部の施設で開始されるに至っています。


産婦人科領域でエヴィデンスをもって腹腔鏡下手術の有位性が示されている疾患は卵巣嚢腫です。また、子宮筋腫なども腹腔鏡下手術の対象になり、現在行われている術式は、卵巣嚢腫切除術、付属器切除術、子宮全摘術、子宮筋腫核出術、子宮内膜症病巣切除術などと多岐にわたっています。


当院でもこのような術式が施行可能です。2012年の8月の開院当初より、婦人科の外科的治療の中心が腹腔鏡となり、2013年2月以降は月間約30~40件ほどの内視鏡手術(腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術、卵管鏡下卵管形成術)が施行されるようになってきました。最近では一ヶ月に60~70件程の内視鏡施術が行われています。当院で開腹手術になるのは、かなり大きな子宮筋腫、子宮肉腫疑いの子宮腫瘍、卵巣がんなどの、比較的限られた疾患です。新百合ヶ丘総合病院産婦人科では、外科的治療の97%程度は腹腔鏡下手術となっています。

悪性疾患に関する腹腔鏡下手術

悪性疾患に関する腹腔鏡下手術は、外科や泌尿器科ではすでに保険適応になっていますが、婦人科領域ではやっと早期子宮体がんが保険収載されたところです。海外での子宮体がんに関する報告では、腹腔鏡と開腹手術を比較検討し、腹腔鏡は手術時間は延長するものの、再発率などは変わらず、出血量が少ないこと、社会復帰が早いこと、術後合併症が少ないことなどが指摘されていましたし、本邦でも多数の施設で子宮体がんに対する先進医療が行われていたことから、上記のように保険診療へ移行することとなりました。


2014年の3月まで行われていた先進医療である、子宮体がんに対する腹腔鏡下手術は、20施設以上で行われていましたが、当院でも先進医療として施行していました。当院は2014年4月以降、腹腔鏡下子宮体がん手術の保険適応での治療が可能な施設として認可されています。(ただし、リンパ節を取る範囲が広い場合は自費になることもあります。)また、子宮頸がんに対しての手術は、無作為試験はないものの、出血量の減少や術後合併症の減少の可能性が高く、先進医療として施行していましたが、2018年4月より保険適用での治療が可能となりました。腹腔鏡下子宮頸がん手術(腹腔鏡下広汎子宮全摘術、腹腔鏡下準広汎子宮全摘術、腹腔鏡下広汎子宮頸部摘出術)は患者さんへの負担を減らす治療法であり、精細な視野を生かした精度が高く再現性のある治療方法として、当院では選択肢として提示しています。現在、治療方法の低侵襲化を目指して、センチネルリンパ節生検をとりいれた婦人科悪性腫瘍の治療を開始しました。

腹腔鏡下での手術方法

3~15mmの非常に小さな傷から、腹腔鏡というカメラを入れ、テレビに映ったおなかの中を観ながら、専用の手術器具を遠隔操作する手術方法です。おなかの中を観察するには膨らませることが必要ですが、これにはつり上げ法と気腹法という方法があります。当院では気腹法といって二酸化炭素のガスをおなかの中に入れる方法で主に行っています。腹腔鏡下手術は日本では1990年頃から一般に普及し、現在では器具の進歩と医師の技術の向上により、ほとんどすべての婦人科疾患に適応されるようになりました。当院では腹部から行う婦人科手術のうち、約96%が腹腔鏡下手術となっています。

 

実際には、おなかの3~6カ所に小さな穴をあけて手術を行います。おへその1か所とおなかの下の方に3か所の穴を開けるのが標準的な切開の部位です。手術の種類によって穴の数と位置は少し異なります。単孔式/2孔式といってへそ1か所/+下腹1か所の傷で行う手術もあります。また、癒着がある場合や悪性腫瘍の手術などでは複数の切開部位が追加されます。

腹腔鏡下手術のメリット

腹腔鏡下手術が適応とされる病気は、不妊症検査、卵巣嚢腫、子宮筋腫、子宮内膜症など良性婦人科疾患のほぼすべてにわたっています。また、子宮体がん、子宮頸がんなどの婦人科悪性腫瘍に対しても当院では腹腔鏡下手術での治療を行っています。おなかを大きく切る従来の手術に比べて、傷も目立たたず、痛みも少なく、入院日数が短いため社会復帰も早くできる利点があります。しかし、おなかの中の状況によっては、数センチの小切開を加えて腹腔鏡と開腹手術を同時に行ったり、また、手術後や炎症性の病気のためおなかのなかで腸などの癒着が強い状況下では開腹手術に移行することもあります。手術で治療をするご病状によって開腹手術に移行する率は異なりますが、その頻度は低く約0.3%となっております。

 

腹腔鏡下手術のイメージ 実際の手術風景

従来の開腹手術 腹腔鏡の創部

※上図は一般的な腹腔鏡の配置であり、術式によって配置や創部の数は変わります。