低侵襲婦人科手術センターホーム 手術合併症について

婦人科低侵襲手術について

手術合併症について

 外科的手術には一定頻度での合併症が生じることがあります。しかし、手術をするにあたっては、適応をよく検討させていただき、手術をするメリットが十分ある場合に限って、腹腔鏡下手術を提示しています。以下に列記した合併症は発症する頻度は低いですが、まれな発生があることをご理解頂くように説明させて頂いています。


出血

 手術中に予想外の出血を認める場合、緊急に開腹手術に移行したり、輸血を使用する場合があります。ただ、一般的には、開腹手術と腹腔鏡下手術で比較すると、出血量は腹腔鏡下手術の方が少ないとされています。
輸血に関する説明は輸血に関する説明書をごらんになって下さい。少し大きめの子宮筋腫などで出血が手術の前から予想される場合は、事前にご自分の血液をためておくことも可能です。また、出血があきらかに予想される場合、セルセーバーという機械をつかって腹腔内に出血した血液を洗浄して輸血に使う(自己回収血)こともあります。
また手術終了時に出血のないことを充分確認しておりますが、まれに術後に再出血を起こすことがあり、この場合再手術にて止血などの処置を行います。


感染や傷の治りが良くない場合

 これも手術後の合併症としては頻度が少ないですが、傷の治りが少し悪くなる方がいます。感染を起こして膿が溜まる(膿瘍形成)場合、傷を開いて膿を出して洗浄したり、再縫合を必要とするときもあります。子宮全摘を行った場合には切除腟断端の離解・出血が稀に起こることがあり、これも再縫合が必要となります。


肺塞栓

 エコノミークラス症候群という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、長い間同じ姿勢を保っていると体のなかの太い血管に血の固まりができて、この固まり(血栓)が肺の動脈に詰まってしまうという病気があります。これは始めから予測することはできませんが、術後に同じ姿勢でお休みになっている時間が長くなるとこの合併症の頻度が上がる可能性があります。そのため、できるだけ発生する頻度を低くするようにつとめています。特殊なストッキングをはいていただいたり、足を周期的に圧迫する機械をつけたりします。また、少しつらいですが、翌日の朝から歩いていただいています。また、患者さんによっては手術前からヘパリンという血栓の予防薬を使用する場合もあります。


コンパートメント症候群

 手術時間が長時間になる場合、まれに、神経の圧迫症状が出現してしまうことがあります。末梢神経の圧迫による障害のため、圧迫を開放する手術が必要になることがあります。また、神経の痛みなどの症状は数日から数年に到ることもありますので、できる限り避けたい副作用です。体の位置が自然の位置になるように、また、圧迫されやすい場所に柔らかいパットを当てるなどの工夫がそれぞれの手術室で行われていますが、当院でも患者さんの体の位置にはとても注意しています。残念ながら、発症してしまった場合は、整形外科・ペインクリニックなどと協力して、対応いたします。


内視鏡手術特有の合併症

 電気メス、超音波メスといった機器を手術に使用します。視野が限られていることもあり、子宮の近くの臓器である、膀胱、尿管、直腸などの消化管および大血管を損傷する可能性があります。数日後から数週間後に症状がでてきたために、消化管をもう一度つなぎ直したり一時的人工肛門などの外科的処置が必要となることもあります。このようなことが起こるのは非常にまれですが、重症の子宮内膜症の方の場合は、癒着が直腸や尿管近くに及んでいる可能性があるので、細心の注意をはらって手術を行っています。

リンパ節郭清を行った場合の合併症(悪性腫瘍手術)

 リンパの流れがうっ滞することで、不可逆的な下肢のむくみが起こることや(リンパ浮腫:5~10%)、リンパ節郭清部でリンパ液のたまりが生じること(リンパ嚢胞)があります。感染による発熱や疼痛、圧迫による神経障害や尿路狭窄などの合併症を起こした場合は、内容液の穿刺・吸引や抗生剤治療が必要となることがあります。


広汎子宮全摘術を行った場合の術後排尿障害(子宮頚癌手術)

 膀胱や尿管の近くを処理する広汎子宮全摘術を行った場合に、尿意の消失や自力での排尿困難が生じ、術後膀胱訓練が必要なことがあります(自己導尿・残尿測定など)。