婦人科低侵襲手術について

最後に

当院の婦人科腫瘍の診断と治療

腫瘍の診断は、画像診断と病理診断が基本になっています。近年ことに画像診断の精度が向上してきました。MRI、CTによる診断のみならずPET-CTは、腫瘍の転移巣の検出に大きな力を発揮しています。当院では、 CT、MRI、PET-CT、SPECTのすべてを備えています。院内でこのような検査ができる環境により、腫瘍の診断・再発転移巣の検査をより早い段階で、迅速に行うことができるようになりました。

婦人科悪性腫瘍に対する治療の方向性として、センチネルリンパ節生検の導入が注目されています。センチネルリンパ節生検の考え方は、悪性黒色腫や乳がんなどから導入され始めました。子宮体がん・子宮頸がんの治療の場面でも、はじめに転移しやすいリンパ節(センチネルリンパ節)の検出が可能になりました。この診療は最低限のリンパ節摘出に手術をとどめるための治療なのですが、新百合ヶ丘総合病院ではPET-CTとSPECTを備え、腹腔鏡下手術の環境も整備されているため、この治療方法(センチネルリンパ節生検)を導入いたしました。

悪性疾患の治療は、患者さんのQOLを考慮することがとても大事だと考えています。南東北病院グループは、陽子線治療やサイバーナイフ治療などを備えていますが、これらの治療機器は悪性疾患への低侵襲治療機器としての機能を備えています。新百合ヶ丘総合病院でも、低侵襲手術の技術と、サイバーナイフなどを活かして、患者さんのQOLをいかに維持するか、工夫しながら診療を行っていきたいと考えています。


腹腔鏡センターを目指して

腹腔鏡下手術の首都圏での現状は、病院によって違いますが、半年~1年手術を待つ患者さんもいらっしゃる状況です。手術適応がある患者さんが1年近くお待ちになるのはあまり好ましい状況ではありません。質の高い手術を迅速性をもって提供するには、人材の充実と機器の整備、および、複数の施設との連携が必須です。

新百合ヶ丘総合病院は、複数の病院やクリニックとの連携の中で、将来的には、年間2000件程度まで内視鏡症例を増加させることにより、患者さんの待ち時間を減少させるとともに、指導医の技術維持と若手医師のスキルアップを行える「腹腔鏡センター」にしていきたいと考えています。

腹腔鏡下手術は高画質化と機器の精度向上によって、高度な技術を多くの医師で共有できるようになり、内視鏡手術が得意な疾患も明確になってきました。手術適応に関しては、以前から議論にはなっていますが、私たちは、婦人科疾患で腹腔鏡下手術のメリットが活かせる疾患は、子宮内膜症と初期の悪性疾患(子宮頸がん・子宮体がん)ではないかと考えています。新百合ヶ丘総合病院では、従来より腹腔鏡下手術の適応を拡大し、重症子宮内膜症、子宮頸がん、子宮体がんなどの病気をお持ちの患者さんにも、適応に応じて腹腔鏡下手術も選択肢として提示させていただいています。

安全面と先進性を同時に考慮しながら、患者さんのQOLをよりよく維持する治療方針は何かというところに立ち返って診療を提供したいと考えています。