手術について(手術前の準備~入院期間や合併症について)

手術前の準備

手術の1~2日前に入院していただきます。患者さんによっては、手術中に腸の一部を切除あるいは切開することになっても、できるだけ安全に手術が行うことができるようにするために、腸の中をなるべく空にすることが必要な場合があります。

麻酔について

原則として全身麻酔になり、麻酔は麻酔科医が管理いたします。手術室に行って麻酔で意識がなくなってから、気管という呼吸をする管のなかにチューブをいれて人工呼吸を行うのが標準的な全身麻酔です。麻酔科の先生の判断で、硬膜外麻酔という背中から行う局所麻酔を追加することもあります。麻酔の詳しい説明は、事前に麻酔科医から行います。

手術後の状態および入院期間

手術が終わると、点滴の他に、お小水が自然に出て行く管が膀胱の中に入った状態で、病室に帰ってきます。まれにこの管の刺激でトイレに行きたい感じがするかもしれませんが、心配はありません。また、なるべく痛みがないようにしっかり痛み止めは使用しますので、ご安心ください。病室に帰ってきてから、翌日の朝まで比較的安静にしていただきますが、このときベッド上で寝返りを打ったり、膝を立てたてたりする動作をおすすめしています。施設によっては手術当日・翌日に退院しているところもあり、手術後の安静が必ずしも必要でなく、逆にすぐに体を動かしていただいた方がよいと考えられています。手術後の痛み止めは点滴、座薬、注射薬などを適宜使用しています。

手術の時におなかを二酸化炭素のガスでふくらませているため、その刺激が横隔膜に及びますが、横隔膜につながっている神経が肩のあたりも支配しているため、手術が終わって数日間は少し強めの肩こりのような肩の違和感と痛みを感じるかもしれません。これは心配のない違和感です。おなかの中のガスは自然に吸収されて、それとともに痛みもなくなります。平均的には、手術後2~3日で退院できます。悪性腫瘍手術で、リンパ節郭清術や広汎子宮全摘術を行った場合は、膀胱機能の評価やリンパ節郭清後の炎症所見の観察のため1週間程度の入院になることがあります。

手術合併症について

外科的手術には一定頻度で合併症が生じることがあります。しかし、手術をするにあたっては、適応をよく検討させていただき、手術をするメリットが十分ある場合に限って、腹腔鏡下手術を提示しています。以下に列記した合併症は発症する頻度は低いですが、まれな発生があることをご理解頂くように説明させて頂いています。

出血

手術中に予想外の出血を認める場合、緊急に開腹手術に移行したり、輸血を使用する場合があります。ただ、一般的には、開腹手術と腹腔鏡下手術で比較すると、出血量は腹腔鏡下手術の方が少なくなっています。

輸血に関する説明は、術前にお渡しする輸血に関する説明書をご覧ください。少し大きめの子宮筋腫などで出血が手術の前から予想される場合は、事前にご自分の血液をためておくことも可能です。また、出血があきらかに予想される場合、セルセーバーという機械をつかって腹腔内に出血した血液を洗浄して輸血に使う(自己回収血)こともあります。

また手術終了時に出血のないことを充分確認しておりますが、まれに術後に再出血を起こすことがあり、この場合再手術や止血剤の投与にて止血などの処置を行います。

感染や傷の治りが良くない場合

感染を起こして膿が溜まる(膿瘍形成)場合、傷を開いて膿を出して洗浄したり、再縫合を必要とするときもあります。子宮全摘を行った場合には切除腟断端の離開・出血が稀に起こることがあり、洗浄と再縫合が必要となります。

肺塞栓

エコノミークラス症候群という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、長い間同じ姿勢を保っていると体のなかの太い血管に血の固まりができて、この固まり(血栓)が肺の動脈に詰まってしまうという病気です。

これは始めから予測することはできませんが、術後に同じ姿勢でお休みになっている時間が長くなるとこの合併症の頻度が上がる可能性があります。そのため、できるだけ発生する頻度を低くするようにつとめています。

特殊なストッキングを着用し、足を周期的に圧迫する機械をつけたりします。また、少しつらいですが、翌日の朝から歩いていただきます。また、患者さんによっては手術前から血栓の予防薬を使用する場合もあります。

コンパートメント症候群

手術時間が長時間になる場合、まれに、神経の圧迫症状が出現してしまうことがあります。末梢神経の圧迫による障害のため、圧迫を開放する手術が必要になることがあります。また、神経の痛みなどの症状は数日から数年に到ることもありますので、できる限り避けたい副作用です。体の位置が自然の位置になるように、また、圧迫されやすい場所に柔らかいパットを当てるなどの工夫がそれぞれの手術室で行われていますが、当院でも患者さんの体の位置にはとても注意しています。残念ながら、発症してしまった場合は、整形外科・ペインクリニックなどと協力して、対応いたします。

内視鏡手術特有の合併症

電気メス、超音波メスといった機器を手術に使用します。視野が限られていることもあり、子宮の近くの臓器である、膀胱、尿管、直腸などの消化管および大血管を損傷する可能性があります。数日後から数週間後に症状が発症し、消化管をもう一度つなぎ直したり一時的人工肛門などの外科的処置が必要となることもあります。このようなことが起こるのは非常にまれですが、重症の子宮内膜症の方の場合は、癒着が直腸や尿管近くに及んでいる可能性があるので、細心の注意をはらって手術を行っています。

リンパ節郭清を行った場合の合併症(悪性腫瘍手術)

リンパの流れがうっ滞することで、不可逆的な下肢のむくみが起こることや(リンパ浮腫:5~10%)、リンパ節郭清部でリンパ液のたまりが生じること(リンパ嚢胞)があります。感染による発熱や疼痛、圧迫による神経障害や尿路狭窄などの合併症を起こした場合は、内容液の穿刺・吸引や抗生剤治療が必要となることがあります。リンパ浮腫の発生予防として、当院ではセンチネルリンパ節生検を導入しています。

広汎子宮全摘術を行った場合の術後排尿障害(子宮頚癌手術)

膀胱や尿管の近くを処理する広汎子宮全摘術を行った場合に、尿意の消失や自力での排尿困難が生じ、術後膀胱訓練が必要なことがあります(自己導尿・残尿測定など)。